こんばんは、副院長です。
日が沈むのは早くなったのに、暑さが和らぎませんね。お盆を過ぎれば涼しくなると思っていたんですが、まだまだ暑さが続きそうです。
今回は、今まで当院のブログでは触れたことがなかった、歯周病と糖尿病の関係についてです。
歯周病と糖尿病は互いに負の連鎖を引き起こしている
まず大前提として、歯周病が糖尿病の直接の原因になったり、逆に糖尿病が歯周病の原因になるということではありません。あくまでも、お互いがリスクを高めあっている、という関係であることに注意してください。
糖尿病が歯周病に与える影響:高血糖状態が続くと、体内のタンパク質と糖が結びつき、AGEという老化物質を作り出します。このAGEは免疫細胞(マクロファージ)と結びつくと、それを活性化させ、破骨細胞という骨を溶かす役割を持った細胞を活性化させる物質を作り出します。そうして活性化された破骨細胞は骨を溶かしていきます。
歯周病が糖尿病に与える影響:歯周病が進行すると、免疫反応として様々な物質が血液中に放出されます。その中でも、TNFーαという物質は、血管内壁のインスリン受容体(インスリンとくっつく部分)と結合してしまいます。本来インスリンが結合して血糖を下げる働きをする部分に、他のものが結合して邪魔してしまいますので、血糖値を下げることができなくなります。これを「インスリン抵抗性」と言います。
また、インスリン抵抗性が高まった状態が続くと、なかなか下がらない血糖値を必死で下げ続けようとするため、やがてインスリンを分泌する膵臓が疲弊してしまいます。
このようにお互いに作用するため、糖尿病と歯周病の負のスパイラルに陥ってしまいます。
歯周病の治療は糖尿病の改善に有効なのか?
有効と言っていいと思います。
糖尿病の検査項目の一つにHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)というものがあります。この数値が高いほど糖尿病の詳しい検査が必要となります。歯周病治療を行うことで、この数値が統計的に有意に0.36%減少することが言われています。また他の複数の論文でも、歯周病治療が血糖コントロールの改善に効果があることを支持しています。
血糖コントロールで歯周病が改善するか?
血糖がコントロールされていない場合、歯周病が重症化するリスクは高まるため、歯周病治療を行う上で血糖コントロールは非常に重要と考えられます。ですが、歯周病の原因はあくまでも細菌なので、血糖コントロールだけで歯周病の改善を図るのは無理です。血糖コントロールはあくまでも歯周病治療の効果をより確実にするためと考えた方が良いかと思います。
歯磨きも血糖コントロールも生活習慣です。両方しっかりと行ってお互いのリスクをなるべく減らしましょう、ということです。
歯周病と糖尿病という2つの生活習慣病がどのように関係しあっているか、というところに焦点を当ててみましたが、いかがでしたでしょうか?
このように、歯周病と全身疾患との関係を研究する分野を歯周医学と言います。糖尿病のほかにも様々な疾患との関連が言われていますので、また紹介出来ればと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。